概要
本計画は沖縄県本島うるま市南東部、勝連半島の緑豊かな地域の一角、 ご両親から譲り受けた土地に
一戸建て住宅を新築するプロジェクトである。設計相談の際施主夫婦より「周りは畑以外何もないが
広々とした敷地がある。そこに30年後も住むことを楽しめる住宅を設計してほしい」と依頼を受けた。
敷地はもともと農地だったこともあり周囲は畑や原野、特に敷地北西側はサトウキビ畑と原生林が
奥行きをもって広がっており、海とは異なる生命力にあふれる「沖縄らしい自然」を感じた。
一方で、敷地は西側の隣地住宅を除き周囲が開けているため、一年を通し強烈な日差しやゲリラ豪雨、
台風などに直接的にさらされることは経験的に容易に想像できる。
周囲に風雨を弱める防風林もないため、建物単体での配慮が求められた。
ご要望に対して、建物の北から南を深い庇と一体化した大きな屋根が沖縄の強烈な日差しや暴風雨から
内部を守り、深い庇を抜けた光を内部に取り込むとともに、南北に視線を向けると広がる畑や緑の
自然の景色をピクチャーウィンドウとして切り取り住宅に取り込むことで日々の暮らしに自然の
移ろいを感じられることができる計画とした。
大きな片流れの屋根は最小CH2200~最大CH4000の天井高さをもつ。この幅の広さを活用し、居室の
一部をスキップフロアとし床下1.0m程度を収納倉庫として活用。前面道路に面する寝室はスキップフロアと
することで大きな開口部から景色や自然風を取り入れつつも道路面からの視線が合わない、開放性と
プライバシーのバランスに配慮した計画となっている。
内部仕上げについて、LDKの大壁はコンクリート打ち放し、床は無垢フローリングを採用し素材の
経年変化も楽しめる計画となっている。赤褐色のケンパスは打ち放しとの相性も良く、今後の経年
変化を施主共々楽しみにしている。
災害のような自然環境から硬質な殻のように身を守り、日々変化する自然の景色を享受し、素材の
変化を楽しむ暮らしの積み重ねがいつか30年という年月にもたどり着く。
設計者である私もその一員として見守っていきたい。
設計 株式会社 アトリエセグエ
構造 株式会社 黒岩構造事ム所
施工 琉幸建設株式会社
撮影 Alien design & Photography 井田佳明